初めまして。とある内科医のブログです。
ここでは一般の方にも分かりやすいような病気の予防について解説していきたいと思います。
記念すべき第1回目は「高血圧症」についてです。

一般の方向けに、なるべく小難しい医学用語を使わずにフランクに説明していきたいと思います。


①高血圧とは?

その名の通り、血圧が高いことをいいます。具体的には上の血圧で140以上を指します。


②なんで高血圧は悪者なの?

では次に、高血圧がなぜ悪さをするのかを説明します。
これはあなたが現在何歳で、今までにどういう病気にかかってきたかによって変わってきます。
例を挙げましょう。

例1) あなたが30歳でこれまでいたって健康だった場合

この場合、多少血圧が高くても多くの場合、すぐには何も起きません。
(もちろん健康診断で何も異常がなくても稀な病気が隠れている場合もあるので例外はありますが)

ではこの先ずっと放っておいていいかといえばそうではありません。
人生は長いので、例えば血圧150の状態で365日、何十年も過ごしていた場合は病気になります。
血圧とは血管にかかるストレスなので、長年高い圧力に頑張って耐えてきた血管は硬くなり、血管そのものが詰まりやすくなったり、その先にある他の臓器が痛んでいくのです。
血管が詰まる、例えば脳梗塞や心筋梗塞といった病気。
痛む臓器は様々ですが、よくあるのは腎臓が硬くなり、機能が落ちてしまいます。腎臓は尿という形で老廃物をろ過して不要なものを捨てるためにあるので、腎臓が働かなければその代わりに透析が必要になります。

といったように長期的にはあなたの健康や人生に不利益をもたらすことが分かっているので、私たちは患者さんにしつこく血圧はどうですか?と聞くのです。

例2)お腹に動脈瘤があると言われ、定期的に病院に通う60代の方。

この場合は先ほどとは違い、私たちは患者さんにより厳しく血圧を下げることをお願いします。
具体的には120以下、です。理由は簡単で、この方の場合は血圧が高くなることで動脈瘤が大きくなり、運が悪ければ突然破裂してしまう、リスクが高くなるからです。これは10年20年といった話ではなく、今の問題なのです。

③血圧を下げるにはどうしたらいいの?


では第1回の最後に、具体的な治療について説明します。
②で説明したように患者さん個人個人により事情は違ってくるので一概には言えないのでもちろんかかりつけの先生に相談するのが1番なのですが、ここでは治療の段階について説明していきます。

まず薬を使わず誰でもできること、それが減塩です。つまりしょっぱい味付けをやめて毎日の食事を薄味にするということです。日本人は塩分大好き民族なので、梅干し、漬物、味噌汁、しょうゆといった日本食を代表する塩分は、気を付けていても無意識に摂取してしまいます。

病院とかで1日の塩分目標は6g以下です、なんて言われてもなかなかピンと来ないと思います。
例えばラーメン1杯を汁まで飲んだらそれだけで塩分6~7gと言われており、1食で既にオーバーしてしまいます。

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もう1つ大事なのが、適度な運動と肥満の解消です。このあたりは言われなくてもそのくらい分かってる、という方が大半だとは思いますが、具体的には筋トレや短距離走のような無酸素運動ではなく、速歩などの有酸素運動がよいと言われています。高血圧の患者さんの中には、心臓が悪い方や、過度な運動を避けるよう言われている方もいると思いますが、「きつくない」程度の運動は血圧だけでなく、肥満の解消や、心不全の治療にも効果があります。(担当の先生から運動を禁止されている方はこの限りではありませんのでご注意下さい)

最後に、運動も減塩も頑張っているのに血圧が下がらない、という悩みを抱えている方も多いと思います。血圧は人間と同じで生き物です。食事や生活習慣だけでなく、遺伝や気候(寒さなど)、精神的な緊張やストレス、不眠といった色々なことが関係しています。「頑張っているけれどどうしても下がらない」という方は、まずは勇気を出して病院に行ってみましょう。

外来をやっているとよく、「血圧の薬って飲んだらやめられないんでしょ?」という質問を受けることがあります。この質問の裏には、「高血圧は心配だけど薬を飲んで依存性が出てしまうのが心配」とか「ほんとに飲まないといけないの?薬の副作用も心配だしただ単に病院の営業目的なんじゃないかな?」とか色々な思いや悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

まず大前提として、「血圧の薬は飲んだらやめられない依存性のある薬物」ではなく、②で説明したような長期的な病気の予防に備える第一歩なのです。例外もあるかもしれませんが、私を含めほとんどの内科医は患者さんの長期的な健康のために高血圧の薬を提案しています。さきほども言いましたが、日本人は塩分を好む傾向にあり、必然的に血圧は高くなりがちなのです。





血圧の薬は麻薬でも禁止薬物でもありません。確かに時々副作用やアレルギーの出てしまう方もいらっしゃいますが、薬を飲むことが高血圧をこの先放置しておくことよりメリットがあるからこそ、内服薬の提案をしています。それでも運悪く副作用(と思われる症状)が出てしまった場合や我慢せずに速やかに担当の先生に連絡して相談するようにしてください。

第1回はこれにて終わりです。最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。
私は予防医学の普及で、日本の医療費問題や健康寿命の延長といった日本の抱えている問題解決の助けに少しでもつながればと思っています。いつまで続けられるか分かりませんがまた更新していくつもりですので今後ともよろしくお願いします。