こんばんは。それでは引き続き残りの生化学検査について説明します。

●ビリルビン(Bil)、γ-GTP(ガンマGTPと読みます)、アルカリフォスファターゼ(ALP)

肝臓機能の続きのようなものですが、ビリルビン、γ-GTP、ALPは、主に胆道系酵素と呼ばれるものです。具体的には、胆石や胆のう炎、胆管炎といった病気で上がります。肝臓の横には、胆のうと呼ばれる臓器があります。胆のうは、肝臓で作った胆汁と呼ばれる脂肪を消化するための消化液を蓄えています。
胆のうの病気では有名なものは胆石というものがあります。これは胆のうという臓器にできる石なのですが、大きさが大きいものについては手術で取らないといけません。大きい石は胆のうの出口を塞いでしまうので、詰まってしまうとそこに炎症やばい菌の感染を起こしてしまうからです。

このビリルビン(Bil)、γ-GTP、アルカリフォスファターゼ(ALP)は、胆のうや、胆汁の通り道である胆道などに炎症や感染が起こると上がってくる酵素なのです。実際に胆のうの出口や胆管が石で詰まると腹痛や発熱が起こり、胆汁に含まれるビリルビンと呼ばれる成分のせいで皮膚が黄色くなることがあります。これを黄疸と言います。これらの「胆道系」酵素が高いときはそうした病気がないか、お腹のエコーやCTなどでチェックしましょう。

●尿酸

次によく話題に出てくる尿酸値。ともすれば血圧や血糖値よりも重視?されてしまうこの尿酸値。
高くなる原因は、ビールやいくら、ウニ、貝類などプリン体と呼ばれる成分の多い食べ物の取りすぎが多いです。個人差がありますが、尿酸値が高い状態が続くと、尿酸が関節の中で固まって結晶になり、関節炎を起こします。痛風発作といって、足の指先に激痛が走るあれです。

もちろん痛風を起こした人にしか分からない痛みがあり、尿酸値は高くないに越したことはないのですが、高血圧や糖尿病に比べて尿酸値が高い人が心筋梗塞や脳梗塞になりやすい、といった確かな証拠は今のところ実はないのです。個人的な見解としては尿酸値を気にする前に、血圧血糖値、コレステロール値をもっと気にするべきだと思います。





●血糖値、とヘモグロビンA1c(HbA1c)


糖尿病とコレステロールの項で説明しましたが、糖尿病の検査値とはどんなものがあるのでしょうか。
血糖値、というと皆さんピンとくると思いますが、上の
ヘモグロビンA1c(HbA1c)とはいったい何者なんでしょうか。

糖尿病の診断基準は、実は少しだけ複雑です。血糖値が〇〇以上は糖尿病、でいいじゃないかと思われるかもしれませんが、血糖値は血圧と同じく条件によって変動します。例を示しましょう。

Aさん:採血の1時間前に唐揚げ、ポテトにハンバーガーを食べコーラを飲んだ。血糖値160。

Bさん:今日は採血なので食事は食べずに来院。血糖値150。


さて、どちらが糖尿病っぽいでしょうか?糖尿病っぽいと敢えて曖昧な書き方にしたのは、これだけでは確実にどちらが正解かは分からないからです。ただし、感覚的にはさんざんカロリーの高い、血糖値のあがりそうな食事を好きなだけしたAさんよりも、空腹時の血糖が同じくらい高いBさんの方が悪そう、ということは想像できますよね?


健康診断は基本的には外来でやるものなので、採血の前に食事をしてきたかどうかも当然患者さんの自己申告です。つまり、1回の採血では条件の違いが個人間で大きいので判定できないのです。

そこで、
ヘモグロビンA1c(HbA1c)があるわけです。これは何かというと、糖化したヘモグロビンが、全ヘモグロビンの何%あるかという値です。なので単位は%になります。ヘモグロビンについては健康診断(血算)の回をお読みください。

赤血球、つまりヘモグロビンの寿命は約120日と言われていますので、このヘモグロビンA1c(HbA1c)という値は食前か食後かに関わらず、最近1~2か月のその人の血糖値の平均を反映します。
つまり、糖尿病の患者さんが、1~2か月間好きなものを食べて生活し、診察(採血)日の前日から節制しても、ごまかしが効かないというわけです。

このHbA1cが6.5%以上、というのが糖尿病を診断する上での1つの基準になります。
繰り返しになりますが、正式な診断基準は少し複雑になるのでここでは割愛します。


いかがだったでしょうか。血糖値の話などは一般的にはあまり知られていないかもしれないですが、自分の健康状態を正しく理解する上ではやはり正確な知識があると助けになると思います。


それでは本日はこのへんで。

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