こんばんは。今回は健康診断の検査値の解釈について勉強しましょう。
といっても健康診断の項目はかなり幅広いので、今回は採血検査に注目して説明していきます。
それでも長くなるので、①血算、②生化学、③凝固系、その他に分けて3部構成で解説していきます。

①血算

まず血算。カッコ内は医学用語での略語です。

検査の項目としては、白血球(WBC)、赤血球(RBC)、ヘモグロビン(Hb)、ヘマトクリット(Ht)、血小板などからなります。細かいことを言うともう少しありますが(MCV, MCHなど)、一般の方が知っておくべきものに限定して説明します。まず血液の成分は血球と血漿に分けられます。血球とは細胞成分、血漿とは液体成分です。・・・回りくどいですね。



はっきり言います、白血球、赤血球、血小板の3人のキャラクターだけ覚えてください。


①-1 白血球

バイ菌と戦ってくれる免疫を司る成分です。これがあるから多少の細菌やウイルスが体内に入っても自力で何とかしてくれるわけです。彼らがいないとすぐさま細菌やウイルスにやられてしまい生きていけません。

白血球の正常値は、血液1μLあたり、だいたい4000~8000個です。μL(マイクロリットルと読みます)とは、1ml(1cc)の1000分の1です。

他の項目でもそうですが、検査値をみるときは、単位に注意してください。一般的には医師どうしの会話でも、「この患者さんは白血球が12000個あるから白血球が上がっている、高いね」というように「4000~8000個」くらいの物差しで認識しています。しかし、病院によっては検査値の表示単位が違うこともあります。

では白血球が高いとき、低いときはどういうことが考えられるでしょうか。

白血球が高いときにまず考えられるのは感染症です。体の中にばい菌が入ると、それをやっつけないといけないので白血球がたくさん作られるわけです。ちなみに風邪などのウイルス感染でも多少は高くなりますが、肺炎や尿路感染などの「細菌」感染の時に高くなりがちです。

その他、白血球が高くなる病気は、白血病や悪性腫瘍(癌のことです)、ステロイドと呼ばれる薬を内服している場合などが考えられます。白血球が正常値より高いから必ずしも異常かと言われるとそうではなく、もともと体質的に少し高めの方もいるので、普段の自分の値と比べて高くなっているかどうかがポイントとなります。

また白血球が低いときには何が考えられるでしょうか。白血球は骨髄と呼ばれる場所で作られますが、何らかの原因で骨髄が弱っているときに低くなることが多いです。具体的には、血液系の病気で下がるケースや、薬の副作用などにより下がっている場合などがあります。また病気ではありませんがご高齢の方では年齢的に下がってくることが多いです。

※重症感染症で、骨髄が白血球が作れないくらい弱ってしまい白血球が低くなることがありますがそんな状態では歩くことすらままならないと思いますので割愛します。

①-2 赤血球

次に赤血球です。赤血球の話をする前に、皆さんは貧血というとどういう状態を想像するでしょうか。
おそらく半分くらいの人は、学生が朝の朝礼でフラッと倒れてしまう、そういった様子を想像するかもしれません。よく誤解されやすいのですが、医学用語でいう貧血は少し違います。

赤血球にあるヘモグロビンというタンパクは酸素を全身に運ぶ役割を担っています。
この赤血球、もしくはヘモグロビンが低い状態を貧血といいます。
貧血の原因は様々ですが、女性などに多いのは、鉄欠乏性貧血という病気です。
赤血球を作るのに、鉄が必要なのですが、鉄欠乏性貧血とはその名の通り、体内の鉄分が不足することで赤血球が作れなくなります。鉄剤を飲めばやがてよくなることがほとんどです。

他には腎性貧血といって、腎臓の機能が不可逆的に落ちていくと、やがて貧血が起こります。
少し難しい話ですが、腎臓から出ている「エリスロポエチン」というホルモンが、赤血球の産生を促す作用があるのです。このため腎臓が悪くなりエリスロポエチンが低下すると貧血が起こります。

最後に、出血が挙げられます。あまり考えたくはないですが、例えば胃癌や大腸癌などがあると、食べ物が胃や腸を通過するときに癌から血が出ます。すると血便が出たり、便が黒くなったりします。
(※ただし鉄欠乏性貧血などで鉄剤を飲んでいると便が黒くなるので黒色便=癌ではないです)

食事は毎日のことなので、目で見てわからないレベルでも、徐々に出血で血が薄くなり、貧血が進むことがあります。

その他、血液系の稀な病気やビタミン不足、薬の副作用などでも貧血が起こることはありますが頻度として多いのは上に挙げたものです。検査項目上は貧血があると「赤血球数」、「ヘモグロビン(Hb)」ともに低下しますが、混乱するといけないので健康診断の際はヘモグロビン値をチェックするといいでしょう。通常男性は13~15g/dL、女性は12~14g/dL程度が正常値ですが、ご高齢の方などは少し低めとなります。

なお、逆にヘモグロビン値が基準値よりも上回って高いこともあります。健康診断前で食事や水分をとっていないなどの理由で脱水状態にあると、血液中の水分も少なくなるので相対的に「血が濃く」なります。その他、喫煙者は多血状態になりやすい、などの特徴があります。

稀に先天性の心臓病や、多血症という血液の病気のこともありますので脱水と決めつけず、医師の判断を仰ぎましょう。





①-3 血小板

最後に血小板です。誰でも子供の頃など、転んで擦り傷ができたり少し血が出たりした経験があるのではないでしょうか。しかし、少しすると自然に止まりますよね?これは、血管に傷が入り出血すると、傷口に血小板という小人のようなものたちが集合して、傷をふさいで止血してくれるからなんです。
血小板は、血栓と呼ばれる血の塊を作ることで止血をします。当然、これがないと人は生きてはいけません。

血小板が高い場合:

血小板の正常値は血液1μLあたりだいたい15万~40万個くらいです。
50万、60万を超えるようだと、多血症と呼ばれる病気の可能性があります。
先ほどお話ししましたが、血小板は血液を固めて血栓を作る作用があるので、余りに血小板値が高い場合は(多血症と呼ばれる病気)、血栓症(脳梗塞や心筋梗塞など)が起こりやすいため治療が必要です。

血小板が低い場合:

血小板が低い場合は肝臓が悪い場合、重症な感染症(敗血症)の場合、白血病などの血液の病気、などが考えられます。いずれにせよ極度に血小板が低いと今度は逆に「出血しやすい」状態と言えます。
ただし血小板の数値自体は3万以下など極端に低い場合を除けば止血機能は何とか保たれていることがほとんどです。ただし血小板が低い理由が大事なので、なるべく早く検査をして原因を調べましょう。


いかがだったでしょうか。血球成分はたった3種類しかありませんが、血算の話は意外に奥深く、それで本が1冊出るほどです。また白血病などに代表される「血液疾患」と呼ばれる少し難しい病気のこともあり、残念ながら全てをご紹介するのは難しいと思います。

余談ですが、「アスピリン」などの抗血小板薬と呼ばれる系統の薬は、血小板に抗う、つまり血液が固まりにくくする(血液をサラサラにする)薬で、脳梗塞の予防や心臓にステントを入れる場合などに使われる薬です。便利な反面、出血の副作用が起こることがあります。



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